鈴鹿の森庭園のしだれ梅
三重県鈴鹿市に一年にたったひと月しか開けない「鈴鹿の森庭園」という知る人ぞ知るしだれ梅園があります。名古屋から車で約1時間半、電車を使うと名古屋から近鉄電車とタクシー(開園中は臨時バスも運行しています)または、ツアーに参加する方法もあります。
鈴鹿山脈を背景にこの見事なしだれ梅が咲き誇る景色は、一生に一度は見たい花景色だと思います。是非機会がありましたらいらしてみてください。時期はその年により異なりますが2月下旬から3月中旬です。
この梅園は日本の伝統園芸文化のひとつであるしだれ梅の「仕立て技術」の存続と普及を目的とする研究栽培農園(運営/赤塚植物園グループ)のため、梅の見ごろが終わったあとはひたすら美しい樹形を保ち次の年の梅の花を美しく咲かせるために、職人の方々が梅の剪定や管理を行っています。
鈴鹿山脈を背景に咲く約200本の桃色の大輪の花で彩られたしだれ梅が見どころです。長年に渡って日本各地から集められた1本1本の名木は、その枝ぶりや木姿も見事で圧倒されます。樹齢100年以上の日本最古の「呉服(くれは)しだれ」をはじめ、八重寒梅、鹿児島紅、紅白の花が咲く「思いのまま」など匠の技と歴史が受け継がれた梅の名木が約30種類、200本。毎年、開花時期に合わせ一般公開しています。
さて、次に観賞する時間帯についてですが、朝は背景に鈴鹿山脈が連なりなんとも雄大で素晴らしい景色が広がり圧倒的に美しい梅の大木の重なり合う景色を小高い見晴らし台から眺めたり、すぐそばに行って見上げたりと飽きることがありません。
鈴鹿山脈を借景に見事に咲き誇る鈴鹿の森庭園の桃色のしだれ梅の花
しかしもっとお勧めなのがライトアップです。昼間見えていた山並みは闇に消え、17時を過ぎると空は青から濃紺に変化し、やがて漆黒の暗闇となります。その変わりゆく空の色とその中に浮かびあがるしだれ梅の姿は得も言われぬ美しさです。初めてライトアップの時間に訪れた時は雨が降っていたのですが、見ているうちにその美しさに傘が邪魔になり思わず落としてしまったほどです。
朝がいいか、夜がいいか、ここはツアーを作るときにも論争になるのですが、私はこの漆黒の闇に浮かび上がる美しいしだれ梅を是非ご覧いただきたいと思います。
鈴鹿近郊でははなばなの里のしだれ梅も同じころ見られ、同じくライトアップも見ごたえがあるのでうまく合わせれば両方のライトアップを堪能することもできるかもしれません。
その他、12種700本のしだれ梅が見られる名古屋市農業センター、枝垂れ梅をはじめ45種500本の梅が咲き誇るのかざはやの里、結城神社など梅の名所が多くありますので是非一度足をお運びください。
艶やかな梅の花に日本の美と春の到来を感じてみてはいかがでしょうか。
日暮れの時間から刻々と変化する空の色に艶やかに浮かび上がるしだれ梅の木姿
花旅コーディネーター 舩山 純(ふなやまますみ)