北海道旭川上野ファームの秋の庭

花旅コーディネーターとして長年様々なガーデン、植物園、国立公園、自生地などをめぐり、花の美しさに魅了されてきました。
その中から押し花を楽しむ花好きの皆さまに私が素敵だな、と感じた花風景を季節ごとにご紹介していく機会をいただき大変嬉しく思っております。

花の美しい風景は様々見ることができますが、人と花を繋ぐ物語やつくり手の思いのあるガーデンなどには特に魅力を感じます。勿論全ての物語を知っている訳ではないのですが、私が知りうるそういったストーリーも時々織り交ぜながらご紹介していきたいと思います。そして将来そのような素敵な花景色の中へご案内できたら嬉しく思います。

さて、初回の今回は北海道の秋のガーデン、中でもオーナーの上野砂由紀さんの可愛らしさとセンスが光る上野ファームの秋の庭をご紹介したいと思います。

11月になると雪が降り始める北海道はその前に全ての冬支度をしなければならないので10月後半は大忙しの季節です。その前の8月後半から10月中旬は爽やかな秋の美しいガーデンを楽しむことができるとても魅力的な季節なのです。上野さんのお話では今年は秋が速足で来ているとのことで、私がテレビ番組(TBSテレビ「マツコの知らない世界」)のロケに行った8月20日頃も初秋の花々が咲いて季節の移ろいを感じることができました。

近年は芽を出してから花が終わり枯れるまでのプロセスを楽しむ庭、ナチュラルガーデンも認知度があがりガーデンを楽しむ季節が長くなってきたように思います。ススキなどの私たちが昔からごく自然に生活の中で季節感を感じていたイネ科の植物を中心にオーナメンタルグラス(オーナメント〈装飾〉+グラス〈草類〉を鑑賞して楽しめる草類)として種類が増えていて、今楽しまれています。ふわっとした穂の部分に夕陽が当たると透けて見えてとても素敵です。

そよそよとそよぐグラスの間にエキナセアやルドベキアが咲いていたり、アスターなどのキク科の植物の群落があったり、秋の花の色は意外と鮮やかで際立つ美しさがあります。それらの花色や形や質感をリズミカルに楽しませてくれるのが旭川の上野ファームです。珍しい種類のコスモスやダリアの花も探してみると種類豊富に入っていて楽しい。どこをどう切り取っても絵になるように植栽しているのだそうです。

上野ファームの代名詞の左右対称な「ミラーボーダー」とノームの家を目を引くフォーカルポイントに広がるナチュラルな「ノームの庭」を中心に季節ごとにドラマチックに変化するガーデンを早回しの映像で見たらその変化に目を見張ることでしょう。その中の最終章の秋、花が枯れて種になっていくシードヘッドもアート感覚で見るととても美しく感じます。周囲は田園地帯なので秋は稲穂が黄金色に変わってきます。

ガーデンの中に射的山という丘のような小さな山(171m)があり、ここを上ると周りの景色を見渡すことができます。頂上にはレインボーカラーの七つの椅子や白いブランコなどインスタ映えするスポットもあります。私は毎年秋になるとこの射的山に上り、黄金色の田園風景を眺めながら忙しかったシーズンを振り返りひとり物思いにふける特別な場所に決めています。

季節感のあるディスプレイも楽しみですが、9月に入るとスタッフ手作りの等身大のハロウインの人形やカボチャの飾りが秋のガーデンを華やかに彩ります。

また、ガーデン内に咲く花を水に浮かべた花手水のデザインも美しいアートの世界を感じます。ゆっくり散策しながら自分だけのお気に入りの場所を見つけてベンチからガーデンを眺めていると押し花作品の創作イメージも沸いてくるかもしれませんね。

納屋を改装した素敵なカフェの中には杉野宣雄先生の押し花作品が飾られていたこともあります。2000種類以上の花々は束ねたり、アートにしても素敵な作品ができそうですね。

私もこのご縁で押し花作りを始めてみました。

最後の写真は、15年くらい前に栃木市の「花之江の郷」で偶然お会いした時の写真です。

花旅コーディネーター舩山 純(ふなやまますみ)